第二音楽室

存在意義が問われる

IDOL舞SHOWについて:古参が振り返る道程

 IDOL舞SHOW(以下ドルショウ)は2019年に始動した声優アイドルコンテンツである。

 トップアイドルが引退したことで空いたトップの座を巡って、複数のアイドルユニットがしのぎを削るというコンセプトで、アイドルユニットを同時に立ち上げてCD販売数などで争わせるというのが初期の方向性だった。

 

パフォーマンス重視のストイック系ダンス&ボーカルユニット「NO PRINCESS」

ライブ映え重視のお祭り系キャピキャピユニット「三日月眼(ルナティックアイズ)」

多様性重視のダークと電波のギャップ系大人数ユニット「X-UC(テンユーシ)」

 

3ユニットが同時に発足した。

 

 ドルショウの第一歩目はいきなりワンマンライブイベントから始まる。

1stシングルも発売される前からライブという駆け足展開に多少戸惑ったものの、予習用にyoutubeに楽曲を期間限定で無料公開したり動画付きラジオも始まったりして、新規コンテンツを盛り上げようという気持ちは伝わってきた。

 

 

1stライブ~豊洲の陣~

 豊洲pitにて行われた1stライブ。

客入りは正直イマイチで、スタンディングも可能な会場にわざわざ椅子を置いたうえで5~6割埋まりといったところ。キャストは全員集合ではなかったもののメイン13人(4人欠席)+MCのたかはし智秋氏+スペシャルゲスト2人の合計16人を集めたイベントにしては物足りない所だろう。

キャストにはまだ声優と呼ぶことすら憚られるド新人、現役女子高生、アイドル転向勢などもおり、すっかり”俺育”がやりたいニッチオタクの青田買い会場といった雰囲気であった。

 ライブと銘打ってはいるが、当然1stシングル分の楽曲しか存在しないのでフル尺でライブなどできるはずもなく、半分ぐらいの時間はトークミニゲームで埋める形だったが、こちらとしてもほとんど初見の人達ばかり(私個人だと名前を知っていたのは諏訪、石飛、豊田、鈴木、木戸、三澤ぐらいだった)なので自己紹介として有意義だったし特に気になりはしなかった。

 肝心のライブパートは、自分でも驚くほど楽しめた。

ノープリのダンスパフォーマンスは圧巻で、かつ歌唱もハイレベルであり個のスペックの高さを見せつけられた。

ルナティックの楽曲はクラップとコールがたくさんあって(当時は声出しができた!)楽しく、盛り上がりだけを考えればここが一番強い。

X-UCは推しのソロパートが結構あってうれしい。あと若い子のミニスカノースリーブが見れる。

というか真面目に曲が良いので聞いてるだけで楽しい。

ユニットごとに別の音楽プロデューサーが付くという豪華仕様で、1stシングルからそれぞれの楽曲に特徴がしっかりと出ていて面白い、ドルショウの中でも手放しで褒められる点であり誰かに勧めたいときは「まず曲を聴いて!」というところから入るだろう。

 さらに引退表明したトップアイドルという設定のプチmもといFool′s Endもスペシャルゲストで登場し2曲も披露してくれたので結局ライブパートは(オープニングも含めて)10曲とそこそこのボリュームで満足感は十分だった。

 少なくとも”可能性”を感じられる出だしだったように思う。

 

 

消えた2ndライブ~コロナ禍の中で~

 1stライブが終わったのも束の間、早くも次のイベントが発表される。

曲は一つも増えていないが今度は欠席者なしとの発表、満を持しての全員集合イベントとなれば1stライブで期待感を抱いた者たちにとっては十分楽しみなものだった。

 そして時は2020年、コロナ禍の到来である。

コロナ初期の激重自粛ムードに押され4月予定だったイベントは当然の延期、最終的には中止になる。

二歩目にしてあまりに手痛い躓きだった。

 良くない知らせは続くもので、この辺りで三澤氏脱退発表。

ダンス重視のノープリについて行けず、自分のレベルに合わせて全体のダンスを簡易化する申し訳なさに耐えられずとのことらしい。まあ内部のことは分からないので何も言えないが後々ウマ娘で活躍しているのを見ると上手い事泥船を降りて勝ち馬に乗ったなぁという感じ。

代わりにmachico加入、よく捕まえてきたなこの人。こっちはこっちで忙しくてイベントに呼べない弊害が出ているがパフォーマンスは文句なしだと思う。

 2ndシングルも発売されるがリリイベの類も打てないのであんまり盛り上がらず、売り上げは1stと比べてかなり落ちたようだ(ただ曲はマジで良い)。

 そんなこんなでいろいろ中止になった代替としてユニット毎に配信イベント開催。

この配信自体はそれなりに興味深いもので、音楽Pが登場してユニットのコンセプトやキャストの人選の意図なんかを語ったり、鷲崎氏がMCを務めて積極的にトークを引き出したり、三澤氏の卒業式をやったりしつつ、ようやく各ユニットフルメンバーのパフォーマンスも披露。ノープリとX-UCは客が全員集合を見られたのは(MVを除くと)現状この時の映像のみである。

とはいえ有料のニコ生配信イベントなど大きな話題になるはずもなく、次のイベントなど発表されるわけでもなく、

さらに一年ほど続いていたラジオも(名目上は一旦)終了。

 コロナ初期の中止祭りでコンテンツが多大なダメージを受けたというのが端から見てもすぐに分かるほど、どんどん雰囲気が落ち込んでいった。

 

 

空白の二年間~突然の復活~

 2020年10月の2ndシングル発売イベントを最後に、ドルショウの活動は完全に沈黙する。

 2021年はイベントや新曲どころか公式サイト、公式ツイッターの更新すらほとんど行われない完全な空白期間だった。

この時期は他にもバトンリレーやらCUE!やらの新興声優アイドルコンテンツが倒れていったこともあり、ドルショウも自然消滅的に討ち死にかと誰もが思っていた。

 そんな折の2022年3月、突如として公式ツイッターが動く。

 

       『劇場版IDOL舞SHOW』22年初夏劇場公開決定!

 

 おいおい正気か?まともな知名度すらないニッチオタクコンテンツの劇場版なんて誰が見に行くんだ......?

と思いつつも再始動を喜びつつ舞台挨拶のチケットを購入。

映画館は舞台挨拶の回ですら空席がある状態、そらそうよ。逆に舞台挨拶じゃない回を見に行くやつ何者だ?

映画の内容は......まあ特筆することは無し、君自身の目で確かめてくれ!

 さらに夏には新ユニット2つが発足、シングルも発売。既存ユニットですら2年半で持ち歌5曲ずつしかないのにユニット増やして手が回るのか疑問だがまあコンテンツが広がることは良いことでしょう。

そんなこんなで再始動したドルショウは二度ほど頓挫した2ndライブにようやくこぎつける。

 

 

2ndライブ~復古の大号令はできましたか......?~

 2022年10月に行われた2ndライブは、非常に物議を醸す内容となった。

なんと公演時間の大半をトークコーナーに費やしライブパートは計6曲(昼の部S席限定で+1曲)という衝撃の構成。持ち歌は増えてるはずなのに1stライブより曲数減ってるってどういうことなの。

流石に企画初期からこの構成だったとは考えにくいし、この二年で売れ始めたキャストもいたりコロナもあったりで練習時間取れなかったのかななどの邪推もやむなしだろう。

 1stや配信イベントを知っている自分としては以前よりキャスト同士の距離が縮まっているのを感じられたり、元々声優が喋ってるだけでもまあまあ楽しめる質なので面白い点もあったが、コンテンツとしてのドルショウに魅力を感じるような内容では無いと言い切ってしまって構わないだろう。

 ファンとしてはせっかくいい曲がたくさんあるのに披露しないのはただただもったいない、口惜しさばかりが残るライブだった。というかテーマ曲であるアイドル天下道へをオープニングでやらないのは流石にあり得んでしょ。

それに今ドルショウでは一番ホットな話題であるはずの新ユニットを呼ばないのもおかしい。本間ましろを演じる近藤は体調不良で他のライブも降板していたのでしかたないがIt's yourサイダーは呼ぶべきでしょ。

さらにさらに、ライブではありがちな今後の展開の発表も一切無し、現状12月に過去曲をまとめたアルバムが出ること以外何の動きも公開されていない。このアルバムも楽曲網羅を謳っておきながら新ユニットの楽曲は未収録、畳む前の最後の集金ですかね。ノープリ1st曲がmachico版に差し替えられていない場合完全に手抜きと断じてよいと思います。

 総括して「やる気」を感じないライブだったと言わざるを得ない。初期の熱意はコロナでぽっきり折られてしまったのだろうか。

 果たしてこれからIDOL舞SHOWはどうなっていくのでしょうか。

 

 

ここがヤバいよIDOL舞SHOW~客から見える問題点~

・キャラコンテンツが薄い

 一応声優コンテンツなドルショウは『外の人』であるキャラクターが存在するが、その影は凄まじく薄い。

現状存在するキャラコンテンツは初期にツイッターで投稿されていた漫画、ドラマCD、劇場版の三つのみ。

漫画はほとんどユニット紹介みたいなもので内容は激薄、ドラマCDもそれに毛が生えた程度でビジュアルが無いので誰が喋ってるのかなと悩みながら聞くばかり。劇場版は主人公の羽美野とさくらに関してはそこそこ掘り下げられたがそれ以外はほぼモブ。

おそらく中の人ですらキャラのことはほとんど理解していないだろう。正直自分もフルネームが言えるキャラは数人しかいない。

2021年の空白期間にもうちょっとキャラコンテンツ充実させるとかできなかったのかなと今更ながらに思う。

 

・人気の偏り

 上記とも繋がるが、キャラがほぼ不在なのでキャラのファンというものは付きようもなく、現状のファンは全て声優のファンと考えて差し支えない。ドルショウ独自のコンテンツが無いので、他作品で名前を売った人が客を引き連れてきているだけなのである。そしてその声優人気も一部に非常に偏っている。

 集金力、集客力という意味での人気は諏訪、豊田、中島の三名にほとんどを占められていると思われる。2nd現地でこの上位陣以外のファンがどれだけいたのか気になるばかり。

 さらに言うとこれら人気キャストのファンにとっても注目度は低い、合計でツイッターフォロワー70万人を超えるが800人の会場を埋められていない現状がそれを物語っている。すでに露出のある彼女らの供給は別の場所でも十分摂取できる、ドルショウにこだわる必要が無いのだ。

 

 

・展望が見えない

 現状2ndライブを終えて次の展開が一切発表されていないのもその典型だが、それ以前から何の情報も出さずに1年以上沈黙したり、かと思えば突然劇場版やら新ユニットやら変な方向に展開したりで全然読めない。

 初期にあったユニット同士の競争展開も鳴りを潜めているし今後どうしていきたいのだろうか。

 とりあえず情報だけでも常に出し続けて客を飽きさせないようにした方がいいのではないでしょうか?

 

 

・貧乏?

 ユニット毎に音楽プロデューサーが別だったり単純にキャストも有望そうな人を集めていて人材周りは結構お金かかってそうだがそれ以外の部分はからっきし、2ndライブのステージセットがあまりにも質素だったことから金無いんじゃないのと指摘している人も見かけた。

 コロナでイベントが大量に飛んで予算消え去ったんだろうなというのは想像がつくが、それでもデザイン面にはもうちょっと力を入れた方がいいと思います。公式からキャラの絵が出力される頻度があまりにも低すぎる。

 

 

おすすめ楽曲5選~曲は良いんです~

 せっかくなのでおすすめ書いときます

 

1:いちにっさんシーサイドストーリー/本間ましろ

 遅れてやってきたヤバすぎ楽曲。

 明らかに意識して古臭く作られているコーラスワーク、スロー目なテンポのポップス、15歳の田舎娘(という設定のキャラ)にこの歌詞を歌わせるのかというクサ目なラブソング、そんな昭和アイドルのオマージュをひしひしと感じる一曲。

 ドルショウ唯一のソロアイドルであり近藤玲奈の特徴的な歌声を存分に堪能できる。

 

2:Papier Mache IDOL/X-UC

 X-UCのダークサイドを代表する一曲。

 Papier Mache=張り子の、張りぼての、という意味のフランス語、アイドルソングにこのタイトルをつける尖りっぷり。

 大人数を生かした畳み掛けるような歌い分けがひとつに定まらない少女の感情を突き付けてくるようにも感じられる。

 

3:叶えて、神様/三日月眼

 一言でいうと女版学園天国(多分違う)。

 非常にノリやすいテンポのテクノチックな音楽は正しくライブ映え間違いなし、声出し解禁したらライブで聞きたい一曲。

 ただし歌詞はバッドエンド。

 

4:Truth or Dare/NO PRINCESS

 ノープリの全てが凝縮されたような、1stシングルにして集大成の楽曲。

 全身を使ったパワフルなダンスと個の歌唱力をしっかりとアピールしてくるソロパートは見るものを圧倒する。

 生で見れば評価が上がること請け合い。

 

5:SENRAN! アイドル天下道へ/IDOL舞SHOW

 ドルショウのテーマ曲であり全員曲(新ユニットは含まない)

 非常にコールが楽しいライブで盛り上がる一曲、常にオープニングで流すべき。

 17人のうち誰がどこを歌っているか、耳に自信のある人は聞き分けにチャレンジしよう。

 

 

 

 

 

 で、次のライブはいつですか?

 

おわり